〈無限輪〉麗晶花園廣場・台湾 桃園 2020
高須賀 昌志
MASASHI TAKASUKA
日本各所にパブリックアートを設置。代表作に〈SANJIN〉〈FUJIN〉〈KAIJIN〉(東京ミッドタウン・檜町公園)や〈家族の肖像〉(ふじみ野駅)などがある 近年は〈無限輪〉(台湾・桃園)、〈空港鋳夢〉(寧波地下鉄2号線「櫟社国際空港」駅・中国)などアジアに活動を広げている 個展(潺画廊、あかね画廊、いりや画廊、織絵アートギャラリー等)多数開催
環境芸術をフィールドに、領域を越えた制作・研究をおこなう 著書に「創造のたね—ドローイングのはなし」(日本文教出版)「高校美術Art and You」(24年文部科学省検定教科書)等 美術教育の分野でも研究活動をおこなう
Sculptor and public artist. Representative works: Sanjin, Fujin, Kaijin (Mountain Spirit, Wind Spirit, Sea Spirit) located in Tokyo Midtown’s Hinokicho Park and Kazoku no Shozo (Family Portrait) at Fujimino Station.
Active researcher in the field of Environmental Art & Design; research and art are based on the relationship between Art & Design and the Environment that surrounds us.
Contributor to the field of Art Education research. Author of two books: The Seeds of Imagination: The Story of Drawing (2011, Nihon Bunkyou Shuppan) and the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology-adopted official high school art textbook Art and You (2012, Nihon Bunkyou Shuppan).
Current professor at Chiba University in Chiba, Japan and an active member of the Japan Society for the Science of Design and the Society of Art Education in University. Serves as Chairman for the Institute for Environmental Art & Design.
1965 神奈川生まれ
1991 安宅英一賞受賞(東京藝術大学)
1992 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了
1995~ 東京藝術大学助手を経て埼玉大学教授(~2024)
現 在 千葉大学教授 東京学芸大学連合大学院教授
環境芸術学会 会長
寧波大学科学技術学院 名誉学院長
浙江大学寧波理工学院 名誉教授
日本デザイン学会会員 大学美術教育学会会員
基礎造形学会会員
● WEBサイト https://www.takasuka-art.com
〈KAIJIN〉うみのかみさま(プレイジム)〈SANJIN〉やまのかみさま(すべり台)〈FUJIN〉ぜのかみさま(ブランコ)
2007東京ミッドタウン檜町公園・六本木
「日本の価値を世界に発信する」(東京ミッドタウンのコンセプト)
日本の伝統的な『文様』をモチーフとして日本人の自然観を表現した
日本では昔から「八百万(やおよろず)の神」森羅万象いかなるものにも神が宿ると考える感覚がある 宗教的な意味が薄れた現代でも、自然を敬う気持ち、大切に思う感覚は息づいている
自然を征服・制御する対象としてではなく、共に生きていく伴走者として感覚がある
西欧の「写生」に対して、東洋では「写意」という言葉が使われる ありのままを写し取るのではなく、自然から本質を感じ取りその精神性を汲み取っていくという意味であり、「文様」はそうした精神性を純化させてきたものとして日本の自然観を表す象徴的なものの一つである
01
「思想」の庭 「風景」の庭
2006N生命保険会社 本社ビル屋上庭園
二つの庭で、企業が持つ精神性を表す
「Dignity(品位)」「Sublimity(精緻)」「Mind(精神)」の三つのキーワードが保険業に問われる姿勢と考えた
右の池を「思想の庭」と題し
三つの造形によって“蓄積”“経験”=「信頼」
二つの丘を結ぶ橋によって“連結”“契約”=「約束」
不等辺四角形によって「均衡」をそれぞれ暗示させている
左側の池は「風景の庭」と題し、人間社会の外側にある「自然」を象徴化した
「地維(ちい)」(大地を支える綱の意)
「風月」(清風と明月)
「山神(さんじん)」(山に鎮座する神)という三つの要素を形象化している
02
むすぶかたち
2019MFLP 三井ロジスティックパーク・船橋
施設理念「ともにつなぐ ともにうみだす」を具現化した
“つなぐ” “ともに” の意味を「結う」行為に集約させ象徴的に表現
大口径(直径 600mm)の鋼管を用い特異な造形性を備え、ユニークな印象を与える
景観に “意外性” “楽しさ” を与える
03
空港鋳夢空港鋳夢八方輻輳
2015寧波市軌道交通地下鉄2号線「櫟社国際空港」「外灘大橋」「寧波火車站」各駅・中国
〈空港鋳夢〉
寧波を中心に航路によって世界に橋渡しをする国際空港のはたらきを形象化した作品の前を移動することで、基底にある濃色と白色の同心円の上を同心の濃色によって描かれた破線が重なり、視覚効果によってオプティカルな視覚効果をつくり出すことで世界に届く「風」を描き出す 国際空港としての拡がりを感じさせる
〈八方輻輳〉
大きな円弧の重なりはこの地が交通の要所であることを象徴している
複雑な組み合わせは精緻な交通網の隠喩である。「安全・安心」「正確・精緻」「大量・豊穣」といった交通要所として欠かすことの出来ない機能を具現している
〈北岸笛韵〉
石による積層された複雑な陰影の上に、古くから伝わる寧波に関わるモチーフ(川、船、城など)を重ねて悠久の時間を表現 重厚な石の表現とシルエットとそれに内蔵された光によって現代的な表現性を帯びる
「外灘」は、都市として核にあたる場所であり、住民にとっては心の故郷である それを支える寧波の刻(厚みのある歴史)に焦点をあてた
04
The Flowers of KOBE
2013神戸ビエンナーレ / 神戸第一突堤
港は多様な文化の集積場である
人と文化の交流の渦が神戸に大きな花を咲かせてきた
2つの花は過去から未来へと続く繁栄への願いの象徴である
夜には様々な言語による『Love(愛)』と『Peace(平和)』が花びらの表面に浮かびあがる
2013年に開催された神戸ビエンナーレに招待出品されたのち 2015年に神戸第一突堤内に建設されたホテル外周の遊歩道に設置した
05
Paper Drawings
2011
「Paper Drawings」と呼ぶ紙やテラコッタ 時には石膏ボードを用いたドローイングによって思索を重ねている
これまでに国内外で数多くのパブリックアートを手がけてきた 人々の多様な思いを造形する中で、その本質をは「言葉をかたちに翻訳する」ことだと考えている
人の思いや考えは言葉の集合体であり それらを視覚表現に置き換えること つまり言葉をかたちや色に翻訳す ることで物事の核心を浮かび上がらせることが求められているのだと思う
近年は造形の骨格を「佇まい」に求め 抽象化・表徴化を通して造形の根源的な姿を捉えようと試みている はたして「佇まい」をどのように構築し得るだろうか
これまで日本文化(習俗)に見られる「表徴」を参照して作品化を試みてきた 「表徴」とは言葉や物では表わせ ない事象や心象を それを連想させる言葉や事物で置き換えて表わすことを言うが、造形の上でも枝葉を省き骨格を抽出し象徴化させることが「表徴」であり、それこそが「日本的抽象」と呼ぶべきものではないかと考えるのだ そこには簡潔性と同時に多義性がともなう
日本における抽象化の究極の形に「紋」や「標(しるし)」 がある日本文化(習俗)の造形手法の核心に「記号化」 があるのではないかと考えるからだ 木版画を用い形を探っている それをシンボルマー クのデザインと言い換えてもよい
素材の重厚さや積極的な空間支配といった彫刻の常道を避け シンボル化した二次元で表現される記号を基に 日本の美意識を下敷きとした「佇まい」を志向し 日本の習俗に適応する「風景に佇む美しい記号」を探求したい
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