土地の記憶 -歌を詠む者- 2023
学生時代から古典技法(鋳造やテラコッタ)にこだわって彫刻作品の制作を展開してきた。
現在は記憶や仏典をテーマとして制作と発表に取り組んでいる。加えて美術館でのワークショップや地域に根差したアートプロジェクトの企画運営にも携わっている。
土地の記憶 -歌を詠む者-
2023さいたま国際芸術祭2023(さいたま市内各所)
本作は「さいたま国際芸術祭2023」の市民プロジェクト(市内在住作家)へ発表したものである。
展示会場が氷川神社の参道だったので、神社の御祭神である「須佐之男命(スサノオノミコト)」と「稲田姫命(イナダヒメノミコト)」をモチーフとして制作した。イメージとしては現代の祭りである芸術祭に古代の祭りの主役が騒ぎを聞きつけて、地中から現れた瞬間を造形している。
赤い作品の副題が「歌を詠む者」で緑色の作品が「紡ぐ人」としており、それぞれスサノオとイナダヒメに対応している。
素材:杉・松、サイズ:(赤)W310 D320 H310㎝、(緑)W210 D220 H250㎝
01
記憶の旅 -林の中の象-
2018石上城行展 ―記憶にふれるとき―(川越市立美術館)
本作は原始仏教の詩篇「ダンマパダ(真理の言葉)」の一節から着想を得ている。
釈迦が弟子たちに修行の心得を問われた際、次のように応えたという。
「悪をなさず、求めるところは少なく、孤独に歩め、林の中の象のように。」
端的にとらえれば修行への覚悟を説いているのだが、個人的には幻想的な景色を夢想してしまった。
1頭の象が悠然と樹々の間を歩く姿、この勝手なイマジネーションを共有すべく、本作は作られている。
素材:ブロンズ、サイズ:70×30×90㎝
02
記憶の景色 -自らを島として-
20172017 CAF,N展(埼玉県立近代美術館)
本作は釈迦の終焉の言葉の一部を引用している。
最後の瞬間、釈迦は弟子たちに次のように言い放った。
「この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、
法を島とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ。」
一見、突き放すようにも聞こえるが、弟子への信頼と励ましが潜在する温かい言葉だと感じる。
丸く隆起したかたちは私たち一人ひとりを象徴するとともに、自然の景色を想起させ、独立しながらも確実に世界とつながっている、そんなイメージを表現している。
素材:テラコッタ、サイズ:280×200×60㎝
03
わたしの容(かたち) -己と光の間-
2015第8回現代日本彫刻作家展(東京都美術館)
人物像の前に小さな家のかたちを配することで、スケール感を幻惑させている。
小さな家が象徴する“わたし”を見つめている大きな“わたし”がある世界。
超越する存在が実はわたし自身であり、“わたし”が“わたし”を見守っているという重層的な世界観をあらわすことで、もう一つの世界認知の在り様を示している。
素材:テラコッタ、サイズ:70×150×180㎝(台座を含む)
04
記憶の容(かたち)-沈黙の回旋曲-
2009森林公園アートフェスタ2009(国営武蔵丘陵森林公園)
家をモチーフとしたテラコッタの作品を10点インスタレーションした作品。
一見、無機質に見えるそれぞれが実は微妙に膨らんでいて、温かみと優しさを醸し出している。
記憶の容(かたち)というタイトルを付すことで、鑑賞者それぞれがポジティブな記憶を回想し、新たな物語を創造することを期待している。
素材:テラコッタ、サイズ:任意
05