会長挨拶
環境芸術とはなんでしょうか?
「環境」は生物が生存するために必要な自然や、人間が生活するための社会的条件を指します。自然環境は私たちを含めた生物が生きていくために必要な基盤であり、その上で営まれる産業や経済活動、政治や教育システムなど、人為によってうみだされる社会環境が大きな影響を与えることも明らかです。これらに加えて環境芸術学会では『自然的環境と人工的環境のみならず、電子的環境に包まれているという、新しい人間の姿を確認しなければならなくなった(設立趣意書より抜粋)』と唱えました。
電子的環境とは、1990年以降に急速な進化を遂げているメディアテクノロジーによって生み出されている環境を意味しています。現代においてはインターネットを介した検索エンジンやソーシャルメディアを起点として、膨大な量の情報伝達や知的資産の蓄積や交換がおこなわれています。あるいはバーシャル空間やメタバース(仮想空間)により、現実との境界や虚実が曖昧になり、私たちの五感を通した体験が変わろうとしています。AI(人工知能)によって思考や想像、さらには創造プロセスにも変化が生じ、クリエイティビティの本質が変容しているかのようです。こうした人間とメディアテクノロジーが接合してかたちづくられる環境が電子的環境といえます。自然的環境や人工的環境と比較して、現代に生きる私たちにとっては最も大きな影響力のある環境といえるのかもしれません。
“環境”を冠した”芸術”。環境芸術は「環境」という多様な概念に呼応する中から構築される芸術やデザインと捉えることができます。
環境芸術学会は、日本におけるメディアアートの先駆者であり、戦後日本美術を牽引した山口勝弘と、ディスプレイデザインの草分けであり、キネティック・アーティストとして世界を舞台に活躍した伊藤隆道の呼びかけによって、国内外の美術・芸術大学の研究者をはじめ、幅広い分野のアーティストやデザイナーが集い2000年に設立されました。「環境」を新しい視点から再定義することによって、身体環境から宇宙環境へ広がる幅広い領域における創造活動の展望を拓くことを意図しています。「環境芸術」が包含する領域は拡大し続けています。それにともない分化されてきた専門性を、領域横断的に交流させる「学際(interdisciplinary)」という思想に基づいて探究することが環境芸術学会の特徴といえます。
水戸市民会館を舞台とする環境芸術学会企画展『つながりと発見』は、設立から四半世紀を経た本学会の真価を問う機会になるものと期待しています。”開かれた学会”として多くの方々に環境芸術の一端に触れていただき、市民の関心を深めるとともに皆様からの忌憚のないご意見を得る貴重な機会となることを願っています。
本展開催にあたり、ご尽力を賜りました水戸市民会館をはじめとした関係各位に深く御礼申し上げます。
環境芸術学会会長 高須賀 昌志
2024年12月8日
歴代会長・副会長・事務局長
| 任期 | 会長 | 副会長 | 事務局長 |
| 2000年7月〜 2001年12月 |
山口勝弘 | 伊藤隆道 藤本修三 |
高須賀昌志 |
| 2002年1月〜 2003年3月 |
伊藤隆道 (会長代行) |
藤本修三 | 高須賀昌志 |
| 2003年4月〜 2005年3月 |
伊藤隆道 | 池田政治 藤本修三 |
高須賀昌志 |
| 2005年4月〜 2008年3月 |
伊藤隆道 | 池田政治 藤本修三 |
高須賀昌志 |
| 2008年4月〜 2011年3月 |
池田政治 | 高須賀昌志 | 酒井正 |
| 2011年4月〜 2013年3月 |
池田政治 | 高須賀昌志 | 酒井正 |
| 2013年4月〜 2014年3月 |
高須賀昌志 (会長代行) |
ーーー | 酒井正 |
| 2014年4月〜 2017年3月 |
高須賀昌志 | 大森正夫 | 酒井正 |
| 2017年4月〜 2020年3月 |
高須賀昌志 | 大森正夫 | 酒井正 |
| 2020年4月〜 2023年3月 |
高須賀昌志 | 大森正夫 鈴木太朗 |
石上城行 |
| 2023年4月〜 2026年3月 |
高須賀昌志 | 大森正夫 鈴木太朗 |
小佐原孝幸 |