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活動報告

 
環境芸術学会第10回大会を終えて 
第10回大会実行委員長 藤本修三
 10月24日(土)、25日(日)の両日、環境芸術学会第10回大会が神戸で開催されました。
初日24日(土)は、神戸ビエンナーレ2009の見学から始まり、午後からは兵庫県立美術館にてパネルディスカッション「まちとアートの未来、環境芸術の視点から」が行われ、竹田直樹氏の司会進行で、同美術館館長補佐の越智裕二郎氏から神戸ビエンナーレ特別展の紹介から始まり、北海道支部から山田良氏、北陸支部から橋本学氏、近畿支部から谷口文保氏らがパネリストとなり近年、急速に進行する地域と連携するアートの現状が紹介されました。
引き続き総会が行われ昨年度事業報告、本年度予算案が承認され、次回大会が埼玉大学で開催されることになりました。そして美術館のレストランで懇親会となり会員相互の親睦が夜遅くまで続きました。
翌25日(日)は、神戸芸術工科大学において口頭発表、屋内外作品展示発表、パネル発表そして、午後から行った分科会、シンポジウムでは会員同士の議論の場づくりを考え、7月11日に東京芸術大学で行った学会創立10周年フォーラムでの記念シンポジウムと連動させ「環境芸術は社会を変える力となりえるか」のテーマのもとに、分科会では「環境芸術の領域」、「環境芸術と社会」、「環境芸術と自然」という3つのテーマに分かれて大森正夫氏、工藤安代氏、高須賀昌史氏のコーディネーターのもとで活発な議論がなされました。引き続きシンポジュウムではパネリストに、それぞれのコーディネーターと進行役に谷口文保氏が加わり環境芸術の未来を考えるための提案や意見が多くの会員からありました。こうした中から環境芸術の「実践性」や「総合性」という特徴が見えてきました。
そして本学会がこうした環境芸術の発展のために質の高い表現を支える「技術」の研鑽に努めなければならないという課題が明らかになってきたことから、本学会の方向性を確認すると同時に、社会とのかかわりも明確になり今回の充実した大会になったのではないかと思っています。
最後になりましたがご協力いただいた神戸ビエンナーレ組織委員会、神戸芸術工科大学、大会実行委員の方々に深く感謝申し上げます。
 
高須賀昌志氏作品   たほりつこ氏作品
神戸ビエンナーレ2009見学 レポート
「神戸ビエンナーレ2009をま「わ Wa」って
酒井 正(学会事務局長)
 第2回目の開催となる神戸ビエンナーレは「わ Wa」をテーマに開催された。メリケンパーク会場では、たくさんの大きなコンテナが並び、個性あふれる展示空間が表現されていた。アートインコンテナ国際展では世界中のアーティストの作品が並んでいた。その中でグランプリを受賞した作品は港、コンテナ、世界をつなぐ「わ wa」というテーマに対して、映像、音楽のメディアと、それをプレゼーンテーションする装置が見事に表現につながり、とても感銘を受けた。いけばな未来展では伝統芸術であるはずのいけばなが、どれも前衛的な表現をしていたのだが、どれも植物との対話を感じられ、通常のアート、デザインとはまた違った視点で作品表現をしている様子をうかがうことができた。
また、会場には学会のたほりつこ氏、高須賀昌志氏による監修、制作の両ゲートが設置されており、対照的な両氏の表現も来場者を楽しませていた。
メリケンパーク会場から兵庫県立美術館会場には船で移動することになるのだが、ここで今回のビエンナーレ最大の特徴でもある、海上アートを観ることになる。防波堤の上に突如として現れるアート作品は驚かずにはいられなかった。計画段階で噂には聞いていたのだが、まさか本当に海の上に作品を設置してしまうとは・・。アート作品があることによって、神戸港の大きな港湾施設群がまた違った見え方をするのが新鮮だった。船上ではダンスパフォーマンスが行われた。ダンスといっても派手な動きではなく、アナウンスもなく始まり、目の前でゆっくり動いたり、いきなり速い動きに変わったり。最初はいったい何が起きているのか理解ができず頭が混乱してしまった。アートを感じるときは身構えてしまうことがよくあるのだが、無防備な状態の自分に静かに入ってきて踊り始めてしまうパフォーマーに一本取られてしまった。
兵庫県立美術館会場では招待作家による展覧会が開催されており、様々なジャンルのアートを拝見することができた。海に面した大きな階段状の広場ではたくさんの人数による身体表現パフォーマンスが行われていた。このパフォーマンスには音楽が流れることがなく、パフォーマーの地面を蹴る音、体がぶつかるときの音、息づかいまでが聞こえてきた。表現を動きにしぼって表現することで、鑑賞者の集中力を高めていたような気がした。
様々な環境の会場で、そこにあった表現を感じることができ、私にとっての「わ Wa」はアートが存在する為に必要な、そこの「場」との関連性や繋がりの重要性だと感じた。
 
メリケンパーク会場   メリケンパーク会場
パネルディスカッション「まちとアートの未来 環境芸術の視点から」 レポート  
竹田直樹(実行委員)
パネリスト: 越智裕二郎氏(兵庫県立美術館館長補佐)
谷口文保氏(神戸芸術工科大学専任講師)
橋本学氏(新潟大学准教授)
山田良氏(札幌市立大学専任講師)
司    会: 竹田直樹氏(兵庫県立大学准教授)
兵庫県立美術館ミュージアムホールを会場に神戸ビエンナーレ2009との共催企画として、一般公開のパネルディスカッションが開催されました。

兵庫県立美術館館長補佐の越智裕二郎氏をゲストにお迎えし、北海道、北陸、近畿の各支部で実践的な活動を展開している会員がパネリストとなって、地域を舞台にした環境芸術の未来についてディスカッションするというものです。

まず、越智氏から神戸ビエンナーレ2009の一環として兵庫県立美術館で開催された「Link−しなやかな逸脱」展について話題提供をいただき、続いて、山田氏から北海道における自らが手がけたアートプロジェクトの試み、橋本氏から新潟県における「越後妻有アートトリエンナーレ2009」と「水と土の芸術祭」について、谷口氏からは、大分県の「別府現代芸術フェスティバル2009−混浴温泉世界」や大阪市における「水都大阪2009」など、西日本におけるいくつかのアートプロジェクトについて紹介がありました。

いずれも、今年展開した最先端の話題であり、2009年の全国におけるアートプロジェクトを概観するものとなりました。これをふまえて、竹田氏のコーディネートにより、アートが地域に何をもたらし、地域をどのように変えることができるのか、あるいは、美術館や大学教育とアートプロジェクトの連携のあり方など、多様なディスカッションが展開しました。
 
谷口氏(左) 越智氏(右)   橋本氏(左) 山田氏(右)
研究発表/口頭発表A室 レポート
相澤孝司(実行委員)
今回の大会では口頭発表が12件と増加した為2会場に分けての発表となった。
座長を担当したA会場の発表は、地域社会と連携したアートプロジェクトの試み、教育的視点と環境芸術、環境・科学・芸術のつながりなど大変興味ある内容であった。質疑応答も活発で、特に実践的な研究事例は様々なノウハウの蓄積であり、聴講者の参考になる部分が多かったと思われる。中でも長尾聡子氏の発表「谷中・音ストリート」は、音楽による地域社会との連携を実践した内容である。新たな手法としての環境芸術の広がりや可能性が感じられるすばらしい発表であった。淡路島での大会から数年がたつが、今回の発表からも環境芸術の多様性や広がりを感じた。また社会からの要請も高まりつつあるように思えた。第10回大会「環境芸術は社会を変える力となりえるか」のテーマのもと当番校として大会を無事終了することができた。なかなか結論のでない大きなテーマであるが、少しその形が見えてきた様に感じた本大会であった。
研究発表/口頭発表B室 レポート 
北野正治(実行委員)
「環境」という言葉は用いる研究者によって持つ空間が異なるが、そのことが豊かさであることを理解している雰囲気が室内に在ったことと、「環境によって提供されたことを研究する」点で方向が一致していたことで各発表が良く絡み合いしだいに熱気のある状況が生まれていったと思われる。
内容はストレートな(環境概念をふまえた)実践報告、省察、理論の構築へと進める発表と、環境芸術の歴史から現代、未来へと見通す、動勢と場、状況の研究発表であった。その中でも、幾つかの生態心理学的に風景論を捉えようとする試みや、音(楽)的視点をテーマにした(概要集も参考)学際的発表が他分野との曖昧な関係と不確定さを含み、スリリングで今後の展開を期待させ、「環境芸術は社会を変える力となりえるか」の問いに答えようとしていた。
研究発表/作品発表、パネル発表 レポート
笹谷晃生(実行委員)
展示場所には神戸芸術工科大学のギャラリー「セレンディップ」と学内の芝地や広場が利用されました。大学は土曜日も開校しており、授業もあるため多くの学生も展示を見ることが可能でした。
今回は作品発表(屋内)15点、(屋外)4点、パネル発表は9点でした。決して多くはない数でしたが、ギャラリーでの展示は特に充実していたように感じられました。作品発表ではメディアアート、現代美術、絵画、立体からデザインまでの多様な表現を含む参加で、まさに環境芸術という概念の今日的な広がりを反映した内容であったと思われます。またパネル発表では第9回大会「コラボの時間」への参加報告が多く、その他には、幾つかの「ワークショップ報告」「積雪を利用した造形」「搭乗型立体造形作品」「越後妻有トリエンナーレ9参加プロジェクト」などの内容が発表されましたが、地域との関係を基盤とするものが多く、ここでも今日の環境芸術のもつある側面が見て取れるように感じられました。
分科会・シンポジウム「環境芸術は社会を変える力となりえるか」 レポート
谷口文保(副実行委員長)
パネリスト: 大森正夫氏(分科会「環境芸術の領域」コーディネーター)
工藤安代氏(分科会「環境芸術と社会」コーディネーター)
高須賀昌志氏(分科会「環境芸術と自然」コーディネーター)
司    会: 谷口文保氏

10月25日、大会二日目の午後は神戸芸術工科大学クリエイティブセンターにて、分科会とシンポジウムが行われました。7月に東京藝術大学で開催された10周年記念フォーラムでの議論をさらに深め、発展させていくため、記念フォーラムと同じテーマ「環境芸術は社会を変える力となりえるか」とし、全員参加の議論の場づくりを目指しました。

分科会はテーマ別に3会場に分かれてディスカッションが行われました。各分科会のコーディネーターは「環境芸術の領域」が大森正夫氏、「環境芸術と社会」が工藤安代氏、そして「環境芸術と自然」は高須賀昌志氏にご担当いただきました。初めての企画だったため、少し戸惑いながらのスタートになりましたが、コーディネーターの皆さんのご尽力により、どの分科会もさまざまな意見が提示され、環境芸術の可能性を問う議論へと展開していきました。分科会「環境芸術と領域」では環境芸術の哲学や社会貢献が議題となりました。分科会「環境芸術と社会」では教育や暮らしと環境芸術の関係性が話題となり、近年のアートやアーティストの変貌についても議論されました。分科会「環境芸術と自然」では環境という言葉の変容や、自然と人間の関係性についてさまざまな意見が交換されました。

続いてのシンポジウムでも、会場全体で議論していくことを目指しました。最初に分科会コーディネーターの皆さんがパネリストになって、それぞれの分科会の報告をしていただきました。そして会場全体での議論に展開していきました。環境芸術とは何か?環境芸術学会はどうあるべきか?そして環境芸術家に必要な力とは?こうした問いにパネリストだけでなく、池田会長をはじめ、多くの会員の方々から意見や提案が提出されました。議論では多様な意見をまとめることよりも、未来に向けての「課題」抽出を重視しました。そうした中で「実践性」や「総合性」という環境芸術の特長が見えてきました。これは他の学会に比べて本学会が持っている魅力であるということも分かってきました。環境芸術家に必要な力を考える中で「全体をイメージする力」や「気付き」といった示唆に富んだキーワードが得られたことも重要です。そして環境芸術学会が創設以来、美によって社会に貢献していくことを目指してきたことが再確認され、だからこそ本学会が質の高い表現を支える「技術」の研鑽につとめなければならないという課題が明らかになってきました。今回90分間の議論を通して、これからの環境芸術学会の方向性が見えてきたように感じられました。

「環境芸術の領域」
担当 大森正夫氏
「環境芸術と社会」担当 
工藤安代氏
「環境芸術と自然」担当 
高須賀昌志氏
大会ポスター
(デザイン かわいひろゆき実行委員)