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活動報告

■環境芸術学会第7回大会「芸術からみる、環境の次代 -都市・自然・未来-」
2006年9月23日〜24日/一部は9月12日〜24日
於:新宿御苑 100周年記念パビリオン 他
 
■環境芸術学会第7回大会「芸術からみる、環境の次代 -都市・自然・未来- 」報告
□第7回大会終了報告
                       大会実行副委員長 池村明生
 環境芸術学会第7回大会は9月23日、24日の2日間、予定通りのプログラムをこなして終了できましたことをご報告いたします。新宿御苑という屋外環境を利用した大会でもあり、スタッフ一同、天候については心配しておりましたが、秋口とはいえ両日とも日焼けするほどの快晴であり、芝生に腰をおろしてシンポジウムを視聴いただける一般の方も多く、有意義な大会であったと感じております。また大都会の広大な芝生と大空のなかで十分に自然を謳歌することができ、あらためて環境芸術の楽しさを再認識させられました。
今大会では、2つの特徴があったと思います。
ひとつは、環境省後援をはじめとした新宿御苑による全面的な協力体制であり、新宿御苑を会場としてお借りすることができただけではなく、フィールドアート展の審査からエキスカーションのガイドまで、新宿御苑関係者の方々にはたいへんお世話になりました。新宿御苑100周年のタイミングで実施できた大会とはいえ、公共組織とのかかわりを大切にすべき学会としても、価値ある成果につながったと感じております。
もうひとつは、会員の方を対象としたフィールドアート展の開催です。大会のメインプログラムとして、公募から書類および面接審査、また制作補助金の捻出までを含めて実施できたことは、創作活動を実践する会員が多く参加する学会として、良い経験になったと思います。
それぞれの成果は、今大会を支えていただいた新宿御苑関係者をはじめ、ご協賛・ご協力いただいた企業団体の方々のおかげであります。皆様にはこの場をおかりして感謝申し上げます。また会員でありながらも実行委員として、それぞれの役割を全うしていただいたスタッフにあらためて御礼申し上げます。今大会の経験が、今後の学会運営につながっていくことを期待しております。
□フィールドアート展            
9月12日(火)〜24日(日) 9:00〜16:30/イギリス風景式庭園
『ヴァルデスランド』展示終了報告として
ヴァルデスランド・プロジェクトチーム 田中智博、松浦圭祐、さとう葉
 新宿御苑での『ヴァルデスランド』作品展示では、とても多くのことを学びました。暴風雨に見舞われた日には、作品の一部である旗が飛んでしまわないかと休憩所で丸一日を過ごし、晴天に恵まれた残暑の週末には、多くの家族連れで賑わう大芝生を行ったり来たりして鑑賞者への作品解説に明け暮れ、またある日には、予期せぬ出来事による作品修繕に追われたりもしました。その一瞬一瞬の様々な出来事は、野外で美術作品を設置することの困難さとそれを乗り越えたときの喜びが交差する体験であったと回想されます。
"ヴァルデスランド・プロジェクト"は、環境芸術学会第7回大会フィールドアート展に合わせ、ドイツ在住の作家とともに短期間で練り上げたプロジェクトです。立案当初は、一回限りの作品展示で終わってしまうものだと思っていました。しかしながら、大芝生に設置された作品、そして新宿御苑そのものの自然環境(エコロジー)と日々向き合い、ご来場者との多くの会話を通じ、自然や環境の問題を人々に伝えるための手段として、「アート」は最適な伝達手段であり表現方法であることをより深く感じました。それとともに、このプロジェクトを続けなくてはならない責任も痛感した次第です。
「人間と自然の架け橋になるメッセージを発していくアートプロジェクト」である『ヴァルデスランド』のアイデアが、新宿御苑に靡く風にのって日本各地をはじめ世界中に広がって行けるよう、これからも努力していくつもりです。
末筆になりましたが、この度は私どもにまたとない好機を与えて頂きました環境省 国民公園 新宿御苑職員の方々、環境芸術学会の皆様に、厚く御礼を申し上げます。皆様のご支援、ご協力のお陰で無事に会期を終えることが出来ました。心より感謝しております。ありがとうございました。
 
 
□エキスカーション
      9月23日(土) 13:00〜15:00/新宿御苑内
 
 新宿御苑普及指導企画官・遠藤稔氏のご案内による御苑散策には、40名近い参加がありました。
新宿門からスタートし、入り口のすぐ近くを人の流れからはずれて一歩入ると、樹齢数百年の木々が堂々と枝を広げているエリアがあります。新宿駅南口の喧噪が徒歩10分の距離にあることが嘘のような空間です。
春に白いハンカチのように見える苞(ホウ:葉が変化した部分)をつけるハンカチノキや、春だけでなく秋にも桜が咲くこと(ジュウガツザクラ)、紅葉の見事さなど、四季折々の見どころを伺って、シーズンごとに度々訪れたい気持ちになりました。
人間によって移植された木々、手入れの行き届いた人工的な環境ではありますが、植物の生命力、自然のゆったりとしたリズムを感じ、長い時間の経過が育んだ豊かな御苑の杜を充分に堪能したエキスカーションでした。
□会員紹介パネル展
  パネル発表/作品発表 (映像)/部会発表 (パネル) 

                  9月23日(土) 13:00〜16:30、24日(日) 9:00〜16:30
100周年パビリオンギャラリー            

会員紹介パネル展
                                          酒井 正
 会員相互の交流と一般来場者の方に、学会員が日頃どのような研究活動を行っているのかを紹介することを目的として、会員紹介パネル展が行われました。各会員から送って頂いたデータを、A3サイズで出力したものをパネルにして、100周年パビリオンに展示しました。
日頃の交流が決して多くない中で、幅広いジャンルで活躍する各会員の姿が見えました。これを機に会員相互のさらなる交流が進むことが期待できます。また、一般来場者の中にも熱心にパネルを御覧になっている方が多かったようです。このように大会に出席することが出来ない会員にも、参加できるようなプログラムがあることをとても重要に感じました。
□口頭発表
9月24日(日) 9:30-11:00/100周年パビリオンステージ
環境芸術学会第7回大会 口頭発表報告
村松俊夫(山梨大学)

 今年の口頭発表は、国民公園新宿御苑内の100周年パビリオンステージで行われた。アスファルトやコンクリートで囲まれた東京の中でも、豊かな自然が残っている数少ない場所である。いかにも“環境”芸術学会の研究発表に相応しい、開放的な会場であった。

 
1.「地域社会におけるライティングオブジェ制作プロジェトの展開」
相澤孝司(神戸芸術工科大学)

発表者らが取り組んでいる、使用済みPETボトルを利用した照明プロジェクトの報告である。近年、クリスマスシーズンから年末年始にかけて、企業主導型の様々な「ひかり」や「あかり」をテーマにしたイベントが定着しつつある。その中でも、地域における自発的な環境問題の啓蒙活動として、学校教育を取り込みながら行われる本プロジェクトは、たいへんユニークなものである。これからもぜひ継続していただきたい。


 
2.「Snow Scape Moere Snow Village Project -有機的彫刻
〜冬季モエレ沼公園にて〜」
神原弘(北海道東海大学・大学院)

イサム・ノグチ設計の札幌市モレエ沼公園をステージにした、環境造形の制作報告である。毛糸を素材としたメッシュで、コンクリートシェル構造の鉄筋を 表現した。これは、降り積もった雪が作り出す盛り上がりの形態と、イサム・ノグチのヴォイドシリーズ彫刻との類似点に着想を得たものである。冬の北海道の厳しい自然と、自然素材ではあるが人工的に作り出された毛糸のメッシュ。この2つの対比が、これからの環境造形の新たな方向性を感じさせてくれて興味深い。
 
3.「気軽に芸術と関わることのできるアイテムの研究」
高橋綾(群馬県立女子大学)

 発表者自身の作品を素材にしたワークショップと、発表者が所属する「人と社会の活性化研究会」を通して実現した個人病院内での環境造形、「癒しの あかり展」の実践報告である。2つの例とも、アートを特別なもの、一部の特殊な人たちが携わるものとしてとらえていない。広く社会の人々に対して開放していくべきものという基本姿勢で、熱意と創意に溢れている。これから同様な取り組みを試行していこうとする者にとって、たいへん参考になる発表であった。

                      
4.「多軸的造形についての研究〜風景を形成する3つの軸〜」
田村吾郎(東京芸術大学博士課程)  

発表者は、現代社会においては、発表者が定義するところの“風景”(おそら くこれは“環境”と言い換えられなくもないであろう)が人々を育み、その人々がまた新たな“風景”を作り出していくと捉えている。その中で生まれる身体的感覚と精神的な感覚のズレを統一すべく、制作と論考を通して考察している。社会思想的テーマをいかに制作と結びつけて表現の領域に踏み込んでいくのか、今後の研究の進展が期待される。
 
5.「見えないものを触知するための造形-時間・空間・重力を
可視化するためのオブジェ-」
                
村松俊夫(山梨大学)

発表者が長年研究してきた「平面上をなめらかに転がる立体オブジェ」の報告である。転がる立体はおもちゃ的なものはいくつか散見できるが、造形作品としての継続的な制作例は見受けられない。コンセプトは、手を使って“環境”の基本的構成要素である時間・空間、そして重力を知覚するというものである。発表では、ステンレススチールのパイプを素材とした作品を、鑑賞者が直接触りながら動かす様子などが示された。今後の取り組みとしては、大型遊具への発展が考えられる。
 

6.「日の出ヶ丘病院におけるアートプロジェクト-びょういんに
おいでよ、 わたしたちの!-」 
           
山崎真一(壁画工房S-ONE)

総合病院内で行われた4人の作家の作品展示と、ワークショップの報告である。美術を通して、患者以外の人々にも病院を身近な環境として親しんでもらう目的で行われた。そこでは、「美術家と病院との連携が生み出され新たな発表や出会いの場を作りだすことができた」。また、「美術家自身が表現活動本来の意味を問い直すきっかけにもなった」との報告がなされた。実現に際しての様々な困難があったと推察されるが、これからもこのような実践が数多く行われて欲しいと強く感じた。

 
 懸念された台風の影響も無く、晴天下のすがすがしい初秋の空気に満ちた会場で、発表は無事終了した。フィールドアート「ヴァルテスランド」の作品が林立する中、イギリス式庭園の美しい芝生を背景に行われた発表は、いつまでも心に残るであろう。