1. トップ
  2. 活動報告
  3. 2005年活動報告
  4. 第6回大会 ビデオメッセージ

活動報告

■環境芸術学会第6回大会「環境・自然/メディア・芸術」

□山口勝弘名誉会員からのビデオメッセージ『環境芸術に期待する』  
10月23日(日) 14:30〜14:40  撮影・録音:前田義寛


皆様、第1回大会から久しぶりでございますが、山口勝弘でございます。学会もようやく第6回まで続けていただいたんですが、今日は久しぶりに皆様の前でお話を聞いていただく機会を得て、会員の前田様のお力でメッセージをお送りすることができることになりました。たいへん嬉しゅうございます。
この地球儀、僕はどうしてもこれが欲しくて・・。北海道もここにございます。僕は環境芸術について様々なことを、長いこと考えてきました。
今回、大会が開かれるこの北海道というのは、日本の中でもっとも感受性の豊かな環境を持っております。まずそれは地下のマグマが熱い、それから遥かサイベリアから流氷が流れてきて、それが冬になると北海道に冷たい環境を作ってきます。その冷たさと熱さの間に人間の感受性が豊かに育つ訳です。そういうことを考えております。それで大会が北海道で開かれるので、僕もできればぜひぜひ出席したかったのですが、次に北海道大会が開かれる時は、ぜひ北海道に尋ねて行くつもりでございます。

 それで環境芸術というのは一体何なのかということを、確か僕は第1回でも話しました。これは僕が今から45年ぐらい前に描いた「宇宙」という作品です。これは地球を示しております。この頃は僕はそんなに地球というのを意識していなくて、宇宙として描いたんです。
これを描いてから僕もずいぶん時間がかかってきましたけれど、どうも人間には二つの文化があると考えます。一つは自然科学あるいは技術環境というもの。それからもう一つは人間環境。自然環境も人間が作る環境ですね。まあそういうものが、宇宙の中では地球だけが、優れた感受性を豊かなものに育てる力を持っております。
もちろん、感受性という、人間の感覚器官をとおして、目、耳、鼻、口、味覚、そういうものを含めて人間は様々な文化、芸術を創り上げてきた。それが人間の生活を豊かにしてきたのです。日本人は特に環境からそういうものを学ぶ力が、昔から強い民族でした。そういう意味では、どうしても環境と芸術が結びつく可能性があると思ったのです。
その理由は、今から考えると20世紀というのは、地球全体が、西欧の芸術文明を含めて、地球全体の中に機械技術文明が盛んになって、これは環境をある意味で悪くした理由なんですね。
この地球儀をよく見ると、地球というのは、僕の絵、あれは地球を描いたんですが、どういう人達が住んでいて、地球の目方はどのくらいなんですか、皆さん。それに対して地球の上に人間が住んでおりますから、人間の目方はどのくらいなんでしょう。そういうことを試みながら考えました。
環境芸術学会がこれからますます盛んになるためには、もう一度、こういう地球規模で環境というものを考える必要があると思います。それからもう一つ、20世紀の大きな過ちは、機械技術文明をあまりにも発達させ過ぎたことです。地球の温暖化の問題、あるいは環境の問題、間違った方向に環境を導いていったことを反省している時代が21世紀なんです。ようやく20世紀をもう一回考え直す機会がきました。
僕もそうなんです。僕は病気になってからずっとそういうことを続けて考えております。
それと、環境芸術学会がこれからますます盛んになるためには、次の世代の環境芸術に関心の高い人を育てること、それからそういう芸術家をバックアップしていかないとだめだと思います。たぶん北海道というのはそういう環境の島ですから、多くの環境芸術家が出て来る可能性を孕んでいるんです。
それともう一つは世界的な規模で、この学会が多くの国際的な会員の協力を得て、環境芸術を、20世紀を客観的に眺めてもう一回考え直すということ。今がチャンスだと思います、皆さん。ぜひぜひ会員の皆様に、そういう方向で環境芸術の可能性、あるいは新しい時代の可能性をよく方向付けることが必要だと思います。

 ところで、来年の2月4日から3月26日まで、鎌倉の神奈川県立近代美術館で僕の個展を開くことになっています。これはある意味、先程お話したような、20世紀の反省を込めながら、これまで作った作品を大小様々並べます。それを皆様、ぜひご覧になっていただきたいと思います。
それから、学会というのはハードなものになりがちなんです。ところが今回は、コロッケ学会会長の長岡会員からの提案で、コロッケの、まさに北海道ならではのコロッケの屋台を出していただくそうです。これは食文化の新しい可能性を提案するものです。人間は五感を通して様々な、味覚を含めて、嗅覚、音もそうなんですが、環境芸術は非常に可能性の広いものですから、まあ、あまり堅くならないようにしていただきたいと、そう思っています。
そしてもう一つは今回も多くの若い会員を含めた参加者から作品が展示される可能性があるようですが、これをうまく方向付けること、それを皆さんでお願いいたします。
食も、あるいはすべて衣装も、衣食住共に、環境と人間のインターフェイスの生み出したものですから、そういう考えでいます。僕は最近、音の作品を作っておりますが、これから聞いていただきますが、これは会員の大山麻里さん、山口泰さんと3人で協力して作った、新宿オペラシティの環境の音の仕事です。
今聞こえている音は森をテーマに作った音です。もちろん実際の森に行って作ったものではなく、森というものを人間の頭で想像しながら、森というのは何だろうということで作った音です。先程申し上げたように、音も自然と環境、自然をとおした、あるいは自然から環境に働きかける重要な問題なんです。
北海道は先程申し上げたように非常に豊かな感受性の島なんです。その環境から、やはり多くの感受性を通して、新しい表現が生まれて来るべき地理的条件があると思います。

 それともう一つ、20世紀の時代はこの地球儀で良く見ると分かるんですが、機械技術文明に対抗しながら人間の筋肉、例えばスポーツを中心とする筋肉文化が盛んになりました。それで、21世紀はどうも神経文化が盛んになる時代がくると思います。筋肉から神経に。筋肉の中に神経が潜っているんですね。
もっと言うと、地球というものは太陽の光を受けて様々な自然の中から人が住み、人が生き、ものを作り、ものが生まれ、育つ。そういう環境の中で、地球がある意味で豊かな惑星になってきたんですけれど、この太陽の光に対してもう一つ、21世紀は月光の時代をもう一度考えて下さい。月の光というもの、昔、日本人は月の光をやはり新しい光として受け取っていたんです。
先程お話したように、機械技術文明は確かヨーロッパから回ったんですね。それが地球全体に広がって、いつの間にか機械技術文明が人間の生活をどんどん、どんどん、変えていった。あまりにも走りすぎて、あまりにも方向が・・。例えば交通手段、飛行機、船、あるいは車、そういうものを、エネルギーを、地球の持っている可能性、エネルギーを掘り出してそれを利用したんですね。
そういう時代の変貌をよくよく、今、考える時期にきていると思います。ですからもう一回、太陽の光に対して月の光を見直す、あるいは電気エネルギーを使ったいわゆるライトアップでなく、僕はライトダウンの時代に入っていると思っております。
最後にこの大会がぜひぜひ、歴史に残るような立派な大会になることをお祈りしております、皆さんご苦労様。ありがとうございました。

メディア・アートの先駆者
山口勝弘展


[実験工房] からテアトリーヌまで
2006年2月4日(土)〜3月26日(日)
神奈川県立近代美術館 鎌倉
2006年4月8日(土)〜5月21日(日)
茨城県近代美術館