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活動報告

 
環境芸術学会第5回大会 概要報告
11月12日〜20日
於:武蔵野美術大学
■ 環境芸術学会第5回大会「環境・連繋・芸術」 報告

□エキシビション「環境芸術の現在2004ーワーク・イン・プログレスの試みー」展/作品発表・パネル発表/11月13日(土)〜20日(土) / 12号館/B1展示室、1階

作品発表を見て/柳英克(公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科)


第5回大会作品発表は武蔵野美術大学12号館地下展示室を主会場として「環境・連繋・芸術」をテーマに開催された。新しい試みとして「ワーク・イン・プログレス」が実施され、展示会場周辺の屋外で出品作家による制作と設置が同時進行で行われていた。環境芸術において、作者は作品とその場の空間を補完し合う関係で成立させることによって創作の意図を達成する。この内なる創造性の発現を他者と共有することが「ワーク・イン・プログレスの試み」であり、作者にとって新鮮な緊張感のある企画であったと思う。中でも12号館前広場のガラスによるインスタレーションは作者の懸命な作業風景が印象深く、多くの美大生や大会参加者の興味を惹いていた。作品は広場のグリッドに沿って矩形のガラス板を構成したもので、この場においてのみ成立するものであり、そこに写り込んだ風景や透過した光模様の刻々と変わる様が儚く美しかった。これらの光景は美術大学の環境にあってごく自然な光景として違和感がなく、また環境芸術における「ものづくり」の原風景のように感じた。

主会場において「環境・連繋・芸術」というテーマのもと出品された作品の傾向は、環境芸術という新しいカテゴリーの作品展らしく、風・光・音・人そのもの・・など様々な環境と饗応する実験的な作品が多く印象に残った。また、環境との関わり方を広い意味で捉え、コンピュータをメディアとしたサウンドと映像、あるいは人と映像の饗応(インタラクション)による作品などは、環境芸術における表現の主流を予感させるものとして定着して来たように思う。

会場を一通り見終えて感じたのは、環境芸術という多様な作品形態を一同に展示することの難しさはあるものの、それぞれ作品を踏まえて綿密な照明のコントロールが為されていたということである。そして光をメディアとした作品には段ボール製のブースが設置され、会場内の照明が干渉しないように工夫されていたが、出品者の一人として主催者の展示会に込められた熱意と情熱が嬉しく心に残った。また、今大会の出品作品には、均質な展示空間に新たに繊細な環境を構築するものと、作品の存在を完結したものとして場に対しコントラストを創出するという、大きくは二つの系統がみられた。特に後者については、より個性のある環境に設置して眺めてみたいという思いが残った。このことは、環境芸術の同一空間における作品展のあり方について今後も問われる課題であり、今大会で実施された屋外での「ワーク・イン・プログレスの試み」にはそのあり方についての示唆があったように思う。

パネル発表質疑応答
地下展示室風景
   

□ワーク・イン・プログレス
作品展示: 11月13日(土)〜20日(土) 制作・設置:11月8日(月)〜12日(金)
ミーティング: 11月13日(土)14:45〜15:45 
12号館/B1展示室、1階ロビーおよび周辺

「ワーク・イン・プログレス」報告 池村明生

武蔵野美術大学で開催した第5回大会では大学構内をフィールドに作品制作を公開する「ワーク・イン・プログレス」を実施しました。また大会当日には、7つの大学から参加した延べ40名の学生の皆さんと会員とともに、ディスカッションをおこないました。ディスカッションでは、「映像やサウンドと環境芸術」「グループ制作における価値、意外性」「日常性と環境芸術の関わり」など、学会にとっても興味深いテーマが語られ、また若い学生の方々と会員とのひとつの場が生まれたことは、今後の大会運営にも有意義であったと感じています。

ー「ワーク・イン・プログレス」に参加してー 田中吉崇(東京電機大)

今回出品させて頂いた作品は「A者機」。他者をA者とみたてて視点の違いの気付きを試みた作品。その、A者機を抱えてプログレスに乗り込んだけど、会場自体がA者機だった。それぞれの「ワーク・イン・プログレス」が作品として具現化され、ミーティングでは作者の思考が言葉として顕在化されていく、その過程を生で目撃することができた。このことはとても非日常的だけど、でも日常的な光景で僕らの「A者機」のように、連続していると気がつかない特別を写真のように切り取った。こういう過程を経て「A者機」も、そして僕らも常に今に今にと、時間を追いかけて変化していける。そう思う。

ミーティング風景
屋外の展示
   

□パフォーマンス/11月13日(土) 15:15〜16:30   
12号館/B1展示室

●パフォーマンスイベントについて クリストフ・シャルル

武蔵野美術大学映像学科のカリキュラムにはパフォーマンスを行う授業があり、クリストフ・シャルルと霜田誠二(NIPAF主催者) が 担当している。その授業を受けた高木峰志、門倉緑、陶山房枝、長尾悠市、北條見和等は音楽や身体パフォーマンスで環境芸術学会大会のパフォーマンスイベントに参加し、ソロパフォーマンスやコラボレーション作品を連続して発表した。門倉と陶山は、パフォーマーと観客との相互関係を重視し、観客席の間で行為を行い、観客の参加を積極的に求めている。時間の加速や停止を感じさせるような、緊張感のある様々なユーモラスな行為は次々に展開している。高木、長尾と北條は、電子楽器や声も含めて生楽器を使用し、コラージュを即興的に行っている。高木の場合、日本の伝統芸能(落語など)をテーマにしたもので、テンポの変化の激しい、身振りも必要とするヴィジュアル面でも豊かなヒップホップ 風の音楽を作り出す。長尾はトランペットや電機ノコギリな ども含 めて、ジャズ風音色を使った、展開の思いがけないエレクトロ・アクースティックな空間を組み込んでいる。北條見和の場合、身体のバランスが取れた状態で、アジア的な民族音楽を思わせるメロディを発声し、コンピュータによって自分の声を使った多重録音し、ライブ・ミックスを8つのオーディオチャンネルによって展覧会の音響空間を活かした。これらの5人のパフォーマンスからは、カラーフ ルな音色による新鮮なエネルギーを 受けることができた。これらの学生によるパフォーマンスは、観客と空間、メディアとの関係など、様々な次元の探検 がなされたと思われる。

●□ トークイベント「異文化の海峡を超えていこう」
/11月13日(土) 16:30〜18:00 12号館/B1展示室
国際交流めぐってトークイベントを開催 前田義寛

環境芸術学会主催のトークイベント「海峡を超えて」は、日本で活躍する4人の外国人をゲストに、伊藤隆道会長が司会役を勤め、「異文化環境の中でのコミュニケーション」の問題を多角的に討論するという形で進行した。
伊藤会長は、最近の中国/上海での個展開催の経験を踏まえ、日本と中国の間の芸術文化交流を例にあげて、「芸術の分野で日本は消極的ではないか」と感想述べ「海峡を超えた交流が環境芸術の発展にも欠かせない」ことを指摘した。
クリストファー・キーナさんは、14年前に長野県に会社を設立、ITなど先端技術のコンサルタントとして活躍しているが、日米間のビジネス交流においても文化の違いから、時には係争問題に発展するケースもあることを指摘した。
クリストフ・シャルルさんは、フランスの大学を出た後、筑波大学で学び、現在は武蔵野美術大学助教授。これまでに世界各国のアーチストと、音・映像・舞踏パフォーマンスをコラボレーションしてきたという豊富な実績の持主だ。今回はシンガポールの映像作家タン・カイシンさんとのコラボで、第二次大戦の体験と記憶を持つシンガポール人をビデオ取材したドキュメントタッチの作品を上映した。カイシンさんは「ビデオを使ってアジアの歴史を見直し、一緒に考えたい」と提案した。
東京藝術大学に留学中の孔繁強さんは、中国における「地域環境芸術」について事例を紹介した。中国では急速な経済発展から都市開発が急ピッチで進んでおり、地域特有の風土、歴史、文化を支えてきた景観が次第に失われている。孔さんは環境芸術の立場から実際に空間計画を作成して慰安してきた実績をスライドで報告した。「地域環境芸術デザインが、伝統文化や景観の破壊を防止することができないだろか」と日本にも通用する問題提起だった。
会場からは、ドキュメント映像作品を巡って、アジアの戦後史に対する認識の違いを鋭く指摘する意見も出され、トークイベントは大いに盛り上がった。最後に、司会の伊藤会長が「アジアの問題も視野にいれて、芸術にとって真の国際交流とは何かを真剣に考えたい」と締めくくってトークイベントは終了した。

□懇親会/11月13日(土) 18:00〜20:00
12号館/8階第談話室

初日から時間刻みに様々なプログラムが組まれ、また直前のトークイベントで重いテーマも取り上げられたため、少々疲れ気味だった参加者も、窓に囲まれた開放的な空間での懇親会でほっと一息つき、普段なかなか会えない旧知の会員や、今大会から新しく入会した会員とも会話が弾んだ。続くイベントのため、地方大会のようにそのまま二次会で盛り上がるというわけにはいかなかったが、翌日のスケジュールを考えるとちょうど良かったか…。

□ネットワークパフォーマンス/11月13日(土) )20:00〜21:00
12号館/8階第1会議室

パフォーマンスイベントについて クリストフ・シャルル 

日本とフランスという、7000キロを経た2地点で、数人のミュージシャンは、音楽と映像メディアによるネットワーク・セッションを行った。参加者はフランスから ESA(エクサンプロヴァンス高等芸術学校)のジェローム・ジョア(Jerome Joy)とピター・シンクラー(Peter Sinclair)と学生数人。日本から、武蔵野芸術大学のク リストフ・シャルルとONZOグループ:小柳淳嗣、菊池玄摩、藤野隆俊、工藤雅之、それから北條見和。また、多摩美術大学の久保田晃弘教授と、田所淳、谷口暁彦、比嘉 了や情報デザイン学科の学生数人が参加した。
ストリーミングという、ネットワーク上の音響・映像の伝達テクノロジーを使用した4つの音響空間を実験した:「交差する空間」(エックスと東京のサウンドスケープをミックス)、「即興空間」(即時反応的なジャムセッション)、「対話空間」(日・仏、二つの言語による対話:言葉、 掛け声、メロディ)最後に「ループ空間」(相手の音を電子的に処理した上、相手に送り返す)。1時間以上、約20人の演奏者というオーケストラがかなり緊張感のある 音の空間を作り上げた。必要とする準備や調整は簡単なものではないため、現在このようなコンサートはまだ少ない。が、将来はこのようなかたちでのライブ演奏が、ごく当たり前に受け入れられる日がくるであろう。

懇親会の様子
ネットワークパフォーマンス

□口頭発表/11月14日(日) 10:30〜11:30  
7号館/第11講義室
 今大会、口頭発表は発表数が少なかったが、田村吾郎氏、鈴木太朗氏とも東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程におけるそれぞれの制作研究テーマについての発表を行い、若い世代のこれからの活躍を期待させた。大学を会場とした大会として、学生参加を積極的に呼び掛けた意図を反映できたのではないだろうか。
また従来、口頭発表はどちらかというと学会誌における論文のように学術的な発表が多く、正直に言って尻込みする作家は多いと思う。今回のような主に制作についての報告・発表も、もっと積極的に行われてもよいのではと感じた。