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活動報告

■環境芸術学会第2回大会「環境と芸術の共創」報告

2001年7月7日・8日
於:東京芸術大学、他

去る7月7日、8日の両日、環境芸術学会第2回大会「環境と芸術の共創」が開催された。参加者は80名を超え、研究発表、シンポジウム、懇親会などが行われた。

□展覧会 「co-creation 2001」

 大会開催に先立って2日から浜松町のコトブキD.I.センター2階ホールで開かれていた展覧会は、作品による研究発表という初めての試みで、実作品、マケット、インスタレーションなど24点が展示された。会員の幅広い活動領域に従って、出品された作品が様々で、限られた空間で展示が難しかったという担当の声も聞かれた。

 また会場に設置されている大スクリーンを利用して、会員のスライドによる作品・活動紹介も行われた。今回はスライド募集の告知が間際であったため集った点数が少なかったが、全会員の氏名を表示して学会の構成メンバーを紹介した。会員相互の理解を深めるためにも、これからもこのような機会があれば多くの参加を期待したい。

 1週間という期間、オープンな展覧会場でのこうした発表は、一般の方にも学会活動の一部を紹介でき、環境芸術に関心を持っていただく良い機会になるので、今後もさらに充実させていきたいと思う。

 

第1日目/7月7日(土曜日)

□東京探査 「66再開発」

 六本木六丁目の市街地再開発の見聞というオプショナルツアーに、7日午前、20余名が六本木の東京日産ビルの会場に集った。来年の竣工に向けて工事が進む開発地を、8階のプレゼンテーションルームから見下ろし、完成模型などを見ながら事業者の森ビル都市企画株式会社の担当者から説明を受けた。
また、ここには港区とニューヨークのマンハッタンの巨大なジオラマがあり、飛行機からのカメラアングルによる両所の景観がモニターに映し出されており、こちらも圧巻であった。

□スライドプレゼンテーション 「大江戸線パブリックアート」
7日午後1時半にコトブキD.I.センター3階で大会受付が始まり、2時半からは、昨年12月に開通した都営地下鉄大江戸線環状線の各駅に設置されたパブリックアートをテーマとするスライドプレゼンテーションが行われた。
アート事業の責任者であり、スポンサー探し・アートマネジメント企業との交渉・建築工事との折衝などに直接関わられた、東京都地下鉄建設株式会社の石村誠人氏のお話は、創作や教育・学問活動をする会員、またマネジメントに携わる会員両者にとって各々興味のあるものであったと思う。開業に合わせて発刊された「駅デザインとパブリックアート」のために撮影された駅空間とアート作品のスライド約100枚のプレゼンテーションは予定時間をオーバーして、石村氏への質問等はその後の懇親会へ持ち越された。

□懇親会

 客船「ヴァンテアン」での立食パーティがセットされたサンセットクルーズで、料理や飲物を味わいつつ、海上から眺める東京の風景を楽しんだ。本学会は会長・副会長とも晴れ男ということで、台風一過で晴れ渡った昨年の設立総会に続き、今大会も好天気に恵まれた。ひとしきりお喋りしてお腹も落ち着くと、デッキに上がってさわやかな海風にあたったりとクルーズを満喫した。
東京湾上での懇親会の後は、伊藤隆道副会長のお宅で2次会ということで、アトリエを兼ねて広い伊藤邸もさすがに一杯になるほど多くの会員が参加した。新宿御苑の緑深い樹々の闇に接して、東京の中心とは思えぬ静かなガラス張りの空間で夜遅くまで会話が弾んだ。
   
 

第2日目/7月8日(日曜日)

□口頭発表
2日目は会場を東京芸術大学に移して、まず3件の口頭発表が行われた。
初めに東京大学・荒川忠一氏との共同研究者、大学院生の有賀清一氏による「東京都ベイエリアにおける『環境公園』の提案」が発表された。風力発電のため東京湾に設置される風車を中心に、環境関連の研究や教育を目的とする「環境公園」をヴァーチャルに構築するという本研究は新聞紙上でも紹介された興味深いものであった。 次に京都嵯峨芸術大学・大森正夫氏による「散策路の風景−エクリチュールとしての桜看?」。京都の哲学の道を事例にサイバースペース上に3DCG空間を作成、景観を構成する形態要素と散策者の視線移動について画像シュミレーションによって検証され、散策路と桜がもたらす空間演出について述べられた。 3人目の株式会社LAO・山口泰氏は「<もう一つのパブリック・アート論>?『平和のオブジェ』製作10年からの考察」として、区民が折る折鶴を素材とし毎年構図を変容して製作するという、東京都墨田区庁舎壁面のアートプロジェクトを通じて考察されたパブリックアートの新たな価値と方向性について発表された。 3件とも発表内容が充実しており、初回ということで件数が少なかったため、全発表を聞くことができたことは幸いだった。
□パネル発表
口頭発表会場の入口ホールで7件のパネル発表が行われた。  東京芸術大学・猪股修身氏らの共同発表「『取手ストリートアートステージ』の為の作品制作報告」、グローバルヴィレッヂ綾・川野紘造氏による「宮崎県産材ハウス2001」、株式会社タウンアート・工藤安代氏と株式会社空間造形コンサルタント・清水裕子氏の共同発表「参加型のパブリックアート」、東亜大学・酒百宏一氏の「空間から空間へ」、さ組・佐倉康之氏と東京芸術大学・竹島麻衣氏による「実践絵画論」、スタジオオプ・趙慶姫氏の「地下鉄空間のガラスレリーフにおける造形」、横川環境デザイン事務所・横川昇二氏の「場の変換 道庭のデザート・プレイス」。 発表者がパネルの前に待機して来場者と質疑応答、討論を行うとしていたが、時間が昼食時にしか取れず、パネルをじっくり見るだけでも充分ではなく、質疑応答までは至らなかったようで残念だった。
□シンポジウム分科会
口頭発表に続き、環境芸術を地域市民の中で考えていく道をつくるという本大会テーマに込められた思いを、午後のシンポジウムに向けて再認識することを目的に分科会が設けられ、会員が具体的に関わった活動をケーススタディとした研究が発表された。
□シンポジウム  
大会プログラムの締めくくりとして、3名のゲストを迎え分科会の座長を合わせた6名のパネラーによるシンポジウム「共創の環境芸術をめぐって」が、山口勝弘会長の司会のもと開催された。
ゲストパネラーの方々からのご自身の紹介を兼ねたプレゼンテーションでは、建築評論家・飯島洋一氏は、ガエタノ・ペシェ、伊東豊雄、ジャン・ヌーベルなどの建築作品を題材に、人間と自然の共創の可能性の模索を報告された。照明デザインを手掛けるプロデューサー・プランナーの面出薫氏からは、光と環境という視点から、建築照明デザインの実例と市民参加の建築探偵団の紹介があった。中京女子大学学長・谷岡郁子氏は愛知万博の開催の是非を討議する市民参加の会議議長を務められた立場から、社会的システムやルールが人々の間につくる不信の構造、差異の強調といった対立を信頼に変えていくにはどうすべきかが提示された。
多彩なゲストによる密度の高い報告がなされ、ここまででかなりの時間が経過したため、その後の議論が充分にされたとは言えないが、いくつか問題提起となる発言があった。一つは本来一匹狼であるアーティストが学会という集団を成すことに対する疑問、また一つは都市型の大企業や公共団体による開発の場におけるパブリックアートに対するアンチテーゼである。
本学会の会員には確かにアーティストが多いが、芸術を環境との関わりにおいて考えていく時、自己の表現欲求の発露としてのみの創造行為ではすまない。一匹狼であればあるほど、視野が狭くなることを恐れ、利害関係のない公平な立場で様々な考え方を自由に発言しあえる場が必要なのではないかということをこのシンポジウムで再認識した。
 
 初めての研究発表をともなう大会ということで、欲張った内容のため、時間的に物足りないプログラムがあったこと、準備の不備などでスムーズでなかったことなど反省もあります。次回をさらに充実させるためにも会員の皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。また、東京芸術大学の学生達のボランティアが大会の運営に欠かせないものであったことを感謝を込めてご報告します。