地域環境アートワークショップ研究部会

名称: 地域環境アートワークショップ研究部会

趣旨: 近年、各地で地域環境をテーマとするアートワークショップが盛んですが、その背景には地域再生や環境教育、生涯学習など極めて現代的な社会的要請があると思われます。こうした状況は芸術そのもののあり方をも変化させていく可能性を孕んでいます。今、こうした活動を実践的に研究していくことは本学会の重要な社会的使命です。以上のような認識に基づいて本研究部会は、地域環境をテーマとするアートワークショップやアートイベントについて様々な角度から分析し、実践的に研究していくことを目指します。

部会長: 谷口文保
部会員: 相澤孝司、大畑幸恵、小野裕子、かわいひろゆき、菊池園、さくまはな、曽和具之、竹田直樹、橋本忠和、藤本修三、安田雅子

連絡先: 連絡先:神戸芸術工科大学 谷口文保研究室
Tel 078-794-2112(大学代表) メール f-taniguchi@kobe-du.ac.jp

【2008年度】
2008年12月6日、神戸芸術工科大学において研究部会を開催した。参加者は10名。笹谷晃生部会長の挨拶で開会し、3名の幹事から実践報告が行われた。
谷口文保氏は、2008年3月から実践している「えびすアートプロジェクト」の報告を行った。このプロジェクトは、知的障害をもつ人を中心とするNPO法人えびすと、神戸芸術工科大学谷口研究室が連携し、絵画やオブジェを制作・販売する活動である。展覧会で生まれた出会いから、アートワークショップを通した地域交流が展開していることなど「人々をつなぐアートの可能性」について報告があった。
竹田直樹氏からは、向島でのアートプロジェクトと京都のギャラリー「虹」における展覧会について報告があった。竹田氏は現在、従来からの植物を用いたプロジェクトの延長として、風景画を用いた地域活性化について活動を計画している。質疑応答では、風景画の新たな可能性について議論が盛り上がった。
相澤孝司氏からは、淡路島の地場産業である淡路瓦の可能性を探る為に神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科学生を対象としたワークショップの実施について報告があった。実際に現地で制作することによって、新しいアイディアが生まれることや、大学生が現地に入ることで地域に交流が生まれ、活性化する様子が良く分かった。相澤氏からは他にも「エコアートフェスタ大阪」の実践や、ドイツのドレースデン市街地における環境芸術の実践「クンストフォーフパサージュ」の見学レポートなどたくさんの報告があった。
3名の報告から議論を進めるなかで、地域住民とアーティストの関係の多様性や、地域と関わるアートと産業やビジネスとの関わりの重要性など、これからのアートを考える上で重要なテーマが見えてきた。

【2013年度】
地域環境アートワークショップ研究部会は、2013年度事業として、公開シンポジウムを開催した。有識者をゲストに迎え、研究部会メンバーの実践報告をもとに、個々の事例を超えて共有されるアートワークショップの効果と課題について議論した。
教員、会社員、大学生など参加者52名であった。アンケートには、「アートWSを自分でもしたいと思っていたので参加しました」(会社員、女性)「話が難しすぎた」(大学生、女性)「最後のディスカッションは内容も様子もとても勉強になりました」(学生、男性)など、さまざまなご意見をいただいた。

タイトル: 「シンポジウム アートワークショップの実践と課題」
日 時: 2013年11月10日(日)13:00-17:00
会 場: KIITOクリエイティブセンター神戸
主 催: 環境芸術学会地域環境アートワークショップ研究部会、神戸ビエンナーレ組織委員会
後 援: 神戸芸術工科大学
実行委員: 相澤孝司・小野裕子・かわいひろゆき・曽和具之・竹田直樹・谷口文保・橋本忠和・藤本修三・安田雅子
プログラム: 第1部 :基調講演
藤原惠洋 九州大学大学院 教授
「アートワークショップの実践と課題 ~建築プロジェクトの立場から相対化を試みる~」
第2部 :実践報告
小野裕子 筑波大学 助教
「創造的復興プロジェクト」
かわいひろゆき 神戸芸術工科大学 教授
「ヒトキズナぷろじぇくと」
谷口文保 神戸芸術工科大学 准教授
「えびすアートプロジェクト」
橋本忠和 佛教大学 特別任用教授(註1)
「海外国際交流壁画共同制作」
第3部 :パネルディスカッション
司会:竹田直樹 兵庫県立大学 准教授

【2015年度】
2015年1月31日、神戸芸術工科大学にて研究発表会を開催した。研究会員である曽和具之氏と大畑幸恵氏が研究発表を行った。曽和氏は、「アートワークショップを通した地域づくり ~新しい学びの場づくりと体験の共有~」と題して、実践経験から考察した「ワークショップにおける学びの流れ」について発表された。大畑氏は、「壁画制作で育むコミュニティスペース 海の色をもちいた美術館アートプロジェクトの試み」と題して、瀬戸内国際芸術祭の一環として実践したアートワークショップについて発表された。実践に基づく発表内容は刺激的で、活発な質疑応答が行われた。続いて、研究会の本年度活動報告を行い、来年度の活動について検討した。

【2016年度】
2016年12月3日、京都のギャラリーGALLERY GALLERYにおいて「ばんばまさえ展「shibori 」」を見学した。ばんば氏によるギャラリートークでは、テキスタイルアートのインスタレーションについて、その素材や技法、発想等の説明があった。参加者からもたくさんの質問があり、有意義な議論の場となった。懇親会では、環境芸術について活発な議論が交わされ、充実感のある研究会となった。

【2017年度】
2017年11月25日に神戸芸術工科大学において研究会を開催した。まず、谷口文保氏が企画運営した展覧会「神戸芸術工科大学日墨交流展 PREFABRICATED」を見学した。学内のエスパースKDUギャラリーで開催された展覧会は、谷口氏が海外研修でメキシコに滞在中、交流を深めたメキシコ人アーティストによる写真作品の展示と、神戸芸術工科大学における日墨交流のプロジェクト等を紹介するものであった。ギャラリートークでは、活発な質疑応答が交わされた。続いて、研究会の本年度活動報告を行った。その後、メンバー各自の近況報告や、来年度の活動について検討した。

【2019年度】
2019年11月17日、神戸の六甲山において見学会を開催し、その後で研究会を行った。今回は、「六甲ミーツアート2019」を見学した。「六甲ミーツアート」は毎年9月から11月にかけて、六甲ケーブルの駅舎、風の教会、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスなど、広範囲に現代アート作品が展示される芸術祭である。秋の紅葉シーズンと重なる芸術祭は、六甲山観光の恒例行事となっている。今回は六甲ミーツアートに展示された大畑幸恵氏のインスタレーション作品を中心に、六甲山の自然環境と芸術祭を見学する研究会となった。大畑氏による作品解説は、現地で作品を見ながら行われたため、その表現の工夫や制作意図が良く理解できた。広大な会場を徒歩で移動していると六甲山の見事な紅葉に目を奪われた。自然環境の美、アートと観光、これからの芸術祭の課題など、歩きながら大いに議論した一日であった。